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【判例要旨】移動端末事件(22-10218)

<事件名>

移動端末事件

平成23年3月23日判決言渡

平成22年(行ケ)第10218号審決取消請求事件

 

<テーマ>

過誤の拒絶理由、進歩性、補正却下

 

<事件の概要>

本件発明(特願平11-278899)は、携帯機器で基地局が提供するゲームを進行させる場合に、受信エリアが変わっても継続してゲームを進行させることができるようにした発明である。拒絶理由は、特許法29条2項により引例1-3により進歩性無しとしたが、引例2は出願時未公開の文献であった。出願人自信により提出された意見書ではそれに言及しないまま拒絶査定となった。拒絶査定不服審判では、同様に引例2が不適格な文献であることを争わなかった。

審決は、新たに周知技術が開示されているとされる文献を引用し、「本願発明は,本願出願前に頒布された公刊物である特開平9-114370号公報(甲1。以下「引用例1」という。)に記載された発明(以下「引用発明」という。),特開平11-281389号公報(甲2。以下「引用例2」という。)に記載された技術(以下「甲2技術」ということがある。)及び周知の技術に基づいて,当業者が容易に発明することができたものであるから,特許法29条2項の規定により,特許を受けることができない。」と認定した。

審決取消請求では、引例2を引用して拒絶審決した点、新たな文献が引用されたことに対する反論の機会が与えられなかったことを争点の一つとして争った。

 

<判示事項>

 判決では次のように判示している。

本願発明が容易想到であるとする根拠として甲2を引用することは許されないから,審決は,その点において誤りがある。しかし,審決は,本願発明が容易想到であるとする根拠として,周知の技術(甲13,12)も併せて挙げているから,甲2を引用した点の誤りは,審決の結論に影響しないというべきである。

原告は,甲13,14に基づく周知技術の認定を予想することができ,かつ,その予測に基づいて,実質的に(意見書にて)対応したということができるから,本件審判手続に違法があったということはできない。

 

<指針>

 引用文献が適正なものであるかどうかのチェックなど、証拠能力を確認することは当然の作業として行う必要がある。審決の結論に影響しなければ、周知技術という伝家の宝刀によって審査段階の過ちも解消されるという論理は納得し難い。


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