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【判決要旨】パン用米粉事件(22-10313)

<パン用米粉事件>

平成23年3月23日判決言渡し

平成22年(行ケ)第10313号 審決取消請求事件

 

<事案の概要>

 本件特許発明(特許第4324237号)の請求項1に係る発明(小麦粉を使用しないパン用の米粉)について特許を無効とする審決の取り消しを求めた事件である。

 本件特許発明は、米粉の粒度を特定し、粗い粉を一定量含有させたことに特徴がある発明である。無効審決は、新潟県食品研究所の報告書(甲1)に記載された発明と同一であると認定した。

 原告は、本件特許発明は用途発明であるから、引用発明も用途発明でなければならず、かつ発明として完成していなければならないとし、完成したというためには、引用発明によって得られる効果が、従来技術に比べて劣悪な場合には、引用発明としての適格性を欠く、という主張をなしている。

 

<判示事項> 

「原告が主張する引用発明の完成とは,引用発明が従前の技術以上の作用効果を有することを意味するものと解されるが,新規性の有無を判断するに当たって,引用発明として示された既知の技術それ自体が,従前の技術以上の作用効果を有することは要件とすべきではない。また,出願に係る発明は,特定の用途を明示しているのに対して,引用発明は,出願に係る発明と同一の構成からなるにもかかわらず,当該用途に係る記載・開示がないような場合においては,出願に係る発明の新規性が肯定される余地はある。しかし,そのような場合であっても,出願に係る発明と対比するために認定された引用発明自体に,従前の技術以上の作用効果があることは,要件とされるものではない。」

 

<指針>

引用発明となり得る要件として効果の程度は無関係。構成の同一性が問題である。用途発明については引用発明と構成同一でも用途に係る記載・開示がなければ新規性が肯定されることがあり得る。


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